今月の質問回答。
正解はないが私はどうしているか
悩みや相談をどんな風に聞いたら良いのか?については、相手と自分の状況や性格によって、正解はまったく異なるだろう。
だから「これが正解」という意味ではないが、私自身が個人的にどうしているかを書いてみたいと思う。
繰り返すが、「正しい答え方」ではなくて、単なる「私が心掛けている答え方」。
アドバイスはしない
- 「がんばりすぎだよ」
- 「無理しない方がいいよ」
そんな温かい励ましワードでさえ、相手の状況によっては負担になってしまう。
言葉の中に「指示」の成分が1%でも入っていると、人は敏感に嗅ぎとるようだ。
本気で心配して言っているつもりでも、アドバイスする側・される側とに分かれると、無意識の上下関係ができやすい。
善意100%のつもりで発せられた言葉が、届いた先では「上から目線」と解釈されることもある。
アドバイスは求められていないことが多い
私は人生の途中まで、〈相談される=私はアドバイスを求められている〉と思っていた。だから、がんばって良いアドバイスを返して、満足してもらわないといけないと。
が、そんなことは稀有だと気づいた。
たいていは「誰かに話を聞いてもらう」あるいは「自分の言動を肯定してもらう」ことで、いま抱えている不安な気持ちを少しでも手放したいだけなのだ。
〈相談される=余計な口を挟まずに徹底的に聞くことを求められている〉
〈相談される=言動を肯定することを求められている〉
この状態のときに、アドバイスを投下すると、逆に問題がこじれやすい。
だから、こちらからアドバイスはしない。
質問されない限り発するのは相づちのみ
「アドバイスはしない」と決めているので、私が人の悩みや愚痴を聞くときに発する言葉は、基本的に相づちのみだ。
- 「うんうん」
- 「なるほどね」
- 「そっか」
- 「へー」
- 「えー」
- 「そうなんだ」
もう、本当にコレ↑しか語彙ない感じ。
沈黙がきても、こちらがしゃべり出さずにグッと我慢していると、相手がまたどんどんしゃべり出す。
こちらがしゃべりたがる様相を見せなければ、相手は
- 「まだ自分のターンでいいんだ。しゃべってていいんだ」
と安心して、しゃべり続けることができる。
しゃべっているうちに勝手に着地していく
そんな風に話しているうちに、相手は自分で答えや着地点を発見していく。
私にできることは、その前に相手のマイクを奪わないように気を付けること。
マイクは、相手に向け続ける。
観察された状態を述べるにとどめる
もし相づち以外に何か言葉を発せざるを得ない状況になったら、観察された状態を事実に即して述べるだけにとどめる。
- 「仕事の話は声が大きくなるね」
- 「彼とは10年付き合ってるんだ」
- 「平日はワンオペ育児なのか」
- 「最近は睡眠時間が短いのね」
- 「その話題は表情が柔らかくなるね」
とか。
不思議なことに、「役立つことを言おう!」「相手を褒めよう!」「癒してあげたい!」とがんばって考えて発射した言葉よりも、ただ観察して気づいた事実を述べただけの言葉の方が、相手をホッとさせる力が強いらしい。
指示成分の入ったアドバイスより、単なる現状表現の方が「私のことを分かってもらった感覚」とともに邪気なく相手の心に届くようだ。
質問されたら質問の答えだけを短く答える
基本は以上だけれど、徹底的に相づちを打っていると、相手が質問してくることがある。
質問された場合には、質問の答えを短く答える。
〈質問=マイクがこちらに向けられている状態〉なので、そこは的確に返答してからマイクをお返しする感じで。
マイクが久しぶりにこちらに向いたのを良いことに、求められている答えを超えて自分がしゃべりたいことをマシンガントークしがちなので、そこはグッと我慢。
質問の答えは、言葉足らずなくらいでちょうど良いと思う。
相手がもっと聞きたい(あるいは聞ける・聞く余裕がある)状態なら、さらに質問してくれるので、それにまた短く答えていけばいい。
こちらがノウハウや経験値を持っているケースは別
ひとつ補足。
冒頭で「アドバイスはしない」と言ったが、特定の分野で私が相談主よりノウハウや経験を持っていて、それを目当てに相談されているケースでは別だ。
相手が求めているのが、私のノウハウや経験値を基にしたアドバイスなのであれば、それに対して答えていく。
ゴール設定は「聞いてもらって楽になったよ」
悩み相談を聞くとき、ゴール設定を
- 「あなたのアドバイスのおかげで解決したよ!」
と言ってもらうことに設定すると、ハードルが高い。
帰宅して寝ようとしたら相手からLINEで、
- 「今日はたくさん話を聞いてもらって気持ちが楽になったよ。ありがとう」
と届くところを目指す方が、ずっとハードルが低いと思う。
そして、相手が本当に求めているものも、後者であることが多い。
反発されることも依存されることも避けたい
前者の「あなたのアドバイスで解決したよ!」と言われることを目指すと、自分の力を誇示しようとして相手をコントロール下に置きやすいという問題もある。
それは、相手の抵抗・反発心を引き起こすことにつながり、悩んでいる相手をさらに苦しめてしまう。
良かれと思って相手がアドバイスしてくれたとき、表面上は感謝して聞きお礼を言うものの、内心カチンと来ることって結構あるのではないか(私はある)。
逆に、アドバイスがスムーズに受け入れられた場合、その回数が多くなるに従って、今度は依存を引き起こすリスクがある。
私は特にこれを恐れている(過去経験から、人から依存されたり寄りかかられたりすることを忌み嫌っている背景がある)。
そのため、あくまでも相手が自分の力で答えを見つけていくのを〈話をただ純粋に聞くという行為によってサポートする〉にとどめる。
それだけでいいの?と思えるが、アドバイスも思い出した自分の話もせず「話をただ純粋に聞いてくれる人」って、実はあんまりいない。
だから、本当にそれだけで相手の役に立てることが多い。
話を聞くのがつらいときは距離をおくのも一考
最後に。純粋に話を聞こうとしても、「話を聞くのがつらい」と感じてしまうこともある。
そのときは、自分が疲れて余裕がないか、相手に寄りかかられ過ぎているかなので、距離を置く。
時折、話を聞いてくれる人へゴミ溜めのように愚痴や悪口を投下して、前に進まない人もいるので、そういう場合は徐々にフェードアウトしてしまう。
過去にそういうケースもあった。
ただ、当時は私の話を聞く能力が未熟だったために、相手は話を聞いてもらっている実感が薄くて、何度も何度も話したり、愚痴悪口がエスカレートしたりしていたのかもしれない、とも思うが。
どちらにせよ、こちらの余裕がないときにがんばって聞いても良いことはない。がんばるなら、距離を置く工夫の方をがんばるようにする。