魚と糖質の食欲抑制メカニズム(魚を食べた後なら甘いお菓子を食べても食欲が暴発しない)

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本題に入る前に、前提となる糖質制限の話から。

私が糖質制限を気に入って、ずっと続けている理由のひとつは、

  • 糖質による血糖値の乱高下による、コントロールできない食欲と感情に振り回されて、人生が壊れかかった経験がある

…からだ。

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糖質制限のデメリットより優先課題があった

体質として糖質の影響を受けやすいうえ、過去には「摂食障害」で治療を受けていた。「生活が脅かされるほど糖質に弱いという課題を、どう解決するか」は、私の人生において優先度の高い案件だった。

そこで出会ったのが糖質制限だ(正確にいうと、当時は現在のような糖質制限の概念が日本になく、アメリカのアトキンスダイエットとして出会った)。

糖質制限は、決して万能な魔法の食事法ではない。警鐘をならす専門家がいることも承知している。

私の場合は、糖質制限から得られるメリットが、デメリットよりも大きかった。言い換えれば、そうなる課題を抱えていた。

糖質とると食欲が暴発してしまう体質

そんな状況にあったもので、私にとって糖質制限は「がんばって我慢して続けるもの」ではまったくない。「糖質とのつらい戦いから解放してくれる、喜んで取り組みたいもの」だ。

「糖質さえ取らなければ、糖質に悩まされることがない」という発見は、私にとって非常に助けとなった。

しかし一方で、

  • ひとたび糖質を取れば、食欲が暴発することに変わりはない

…ということも、わかっていた。

だから、余計な糖質を口に入れるのが怖かったし、いったん糖質過多になるとループから抜け出せず、糖質の多い食生活が数週間、続いたりした。

糖質制限中にお菓子を食べた(本来なら食欲が暴発するパターン)

ここからが本題。先日、とあるタイミングがあって、超・甘いお菓子を食べた。

食べたのは、白餡を薄いカステラ生地で包んで焼き上げ、全体をホワイトチョコでコーティングした卵型の菓子。

過去の感覚でいえば、ひとたび食べれば最後、私のなかの糖質食欲が暴発して、「もっと!もっと!」となるはずだった。

その第1陣は食べてすぐやってきて、お菓子を1個食べたら1個で終われるなずなんてないという激しさだ。

さらに、ガーンッ!と上がった血糖値が下がった頃の数時間後、第2陣の「もっと!もっと!」がやってきて、理性などほっぽり出して無茶苦茶に食べてしまう。

コレが嫌だから、せっせと糖質制限をしているのだ。

「あんな思いをするくらいなら、徹底的に糖質制限をしたほうが、100万倍ラク」

…という思いがある。

ところが1個で満足感がすごい(食欲が暴発しない)

…ところが、今回に限っては異なっていた。お菓子1個で満足感がすごい。

いや、正確にいうなら、0.7個食べたあたりで、

「あれ、1個全部食べなくてもいいかも」

と、若干“ウッ”とくる感覚があった。

この“ウッ(おなかいっぱい、食べられない)”という感覚を、摂食障害時代は喪失し尽くしていたので、「こんな日がくるんだなあ」と感慨深くもありつつ、1個を完食。

そのまま、「もっと!もっと!」はこなかった。数時間たっても一日たっても次の日になっても来なくて、通常運転モードのままだった。

普通の人の当たり前ができていることに驚き

お菓子を1個食べても、1個で満足できて、何事もなかったかのように通常の食生活に戻る。

普通の人から見たらごくごく当たり前のことなのかもしれない。けれど、今までの私の経過と照らし合わせると、これはびっくりな現象だった。

「糖質制限して食欲のコントロールができる」ところまではたどり着いていた。

今回は「糖質を食べてなお、食欲のコントロールができる」という新しい階段をのぼったらしい。

何が違う?→お菓子を食べる前に「サバ」を食べていた

糖質制限は、これまでもずっとしている。今回違うのは、糖質制限のなかでも「魚食」にハマっているということ。

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前述の“お菓子”を食べたのも、サバをメインとした食事のあとに食べたのだ。

「魚と血糖値の関係」を裏付けるデータ

魚には、血糖値の上昇をゆるやかにする効果があるのでは?」と考えて検索してみると、それを裏づける研究データがいくつも見つかった。

魚を先に食べると血糖値の上昇がおだやかになる

関西電力医学研究所の清野裕氏・矢部大介氏らの研究グループが、興味深い実験を行っている。2型糖尿病の患者を対象に、「先にサバの水煮を食べてから15分後に米飯を食べるパターン」と「先に米飯を食べてからサバの水煮を食べるパターン」を比較したクロスオーバー試験だ。

結果は明確で、魚を先に食べたほうが食後の血糖上昇は有意に抑えられていた。この研究は欧州糖尿病学会の機関誌「Diabetologia」に掲載されている。

そのメカニズムとして注目されているのが、インクレチンという消化管ホルモンのはたらきだ。

インクレチンとは、食事をとると小腸などから分泌され、膵臓を刺激してインスリンの分泌を促すホルモンの総称。代表的なものにGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)とGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)の2種類がある。

魚に含まれる脂肪酸などの成分が、このGLP-1の分泌を促す。GLP-1が増えるとインスリンの分泌が促進されるだけでなく、胃の運動がゆるやかになって内容物の排出が遅くなる。実際、魚を先に食べた群では胃の排出時間が2倍以上延長していたという。胃からゆっくり食べ物が送り出されれば、血糖値の急上昇も抑えられるわけだ。

研究グループは、こうした「食べる順番」の効果について、和食の会席料理にも通じると述べている。先付け(前菜)で食物繊維をとり、向付(刺身)や焼き物で魚のたんぱく質・脂質をとってから、最後にご飯が出てくる構成は、食後の血糖上昇を抑えるための古来からの知恵ともいえる。

Kuwata S, Yabe D, Seino Y, et al. Meal sequence and glucose excursion, gastric emptying and incretin secretion in type 2 diabetes: a randomised, controlled crossover, exploratory trial. Diabetologia, 2015.、糖尿病ネットワーク「’食べる順番’ダイエットで食後高血糖を防止 米より前に野菜・魚・肉」厚生労働省 e-ヘルスネット「インクレチン」

魚を日常的に食べる人は糖尿病リスクが低い

食べる順番だけでなく、日常的に魚を食べる習慣そのものが血糖コントロールに好影響を与える可能性も示されている。

国立がん研究センターなどが実施した大規模疫学研究(JPHC研究)では、40〜75歳の日本人約5万3,000人を対象に追跡調査を行った。その結果、魚介類の摂取量が多い男性ほど、糖尿病の発症リスクが低下する傾向が見られた。最も多く食べるグループでは、最も少ないグループと比べてリスクが約27%低下していたという。

とくに効果が期待されるのは、アジ・イワシ・サンマ・サバなど、脂ののった小〜中型の青魚だ。これらに豊富に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)といったn-3系多価不飽和脂肪酸が、インスリンの分泌やはたらきを改善すると考えられている。

いっぽう、タラやカレイのような脂の少ない白身魚では、同様の関連は確認されていない。魚なら何でもよいというわけではなく、”脂ののった魚”がカギとなるようだ。

国立がん研究センター「魚介類摂取と糖尿病との関連について」(JPHC研究)、糖尿病ネットワーク「魚をよく食べると糖尿病リスクが低下 インスリン抵抗性が改善」

魚の脂肪酸が肉と異なるポイント

ちなみに、米飯より先に肉を食べた場合も血糖上昇は抑制される。ただし、肉を先に食べるとGIPの分泌が強く促進されるという違いがある。GIPには脂肪を蓄積する作用があるため、長期的には肥満につながるリスクが懸念されている。

魚の場合、EPAやDHAはGIPの分泌にはさほど影響しない。つまり、血糖値を抑えつつ脂肪蓄積のリスクも低いのが、魚を先に食べる利点だといえる。

岡山県糖尿病医療連携推進事業「魚・肉→ごはんの順に食べると、食後血糖が抑えられる?」

魚を食べたあとだから食欲が暴発しなかったことに納得感がある

サバ缶ブームのときは、サバ缶が「血糖値を下げる」というフレーズもよく見かけた記憶がある。

今回の私のケースでは、まさにサバを食べた直後にお菓子を食べたタイミングだった。サバのEPA・DHAが腸にはたらきかけてインクレチンの分泌を促し、その結果として血糖値の急上昇が緩和された——。そう考えると、「食欲が暴発しなかった」理由の説明がつく。

「魚を食べたあとならば、糖質を食べても大丈夫」ということがわかれば、今よりもずっと生活しやすくなる。今後も意識しながら実験を続けてみたいと思う。

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