なぜ歯周病が心筋梗塞やアルツハイマーの原因になるのか?予防する対策方法

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歯周病は、単なる「口の中の病気」ではない。歯茎から血管に侵入した歯周病菌が全身をめぐり、心筋梗塞やアルツハイマー型認知症といった命に関わる疾患のリスクを引き上げる。

「歯茎が腫れているだけ」「口臭がするだけ」と軽く見ていると、取り返しのつかない結果を招きかねない。

目次

心筋梗塞やアルツハイマーと深く関連している歯周病

歯周病の恐怖は、口の中だけにとどまらない。

心臓病と歯周病の関係

歯周病菌が歯茎の毛細血管から血流に乗って全身に回ると、血管の内壁に炎症を引き起こす。その結果、血管内にアテローム性プラーク(粥状の脂肪性沈着物)が形成され、動脈硬化が進行する。

このプラークが破裂すれば血栓ができ、心臓の冠動脈を詰まらせて心筋梗塞を引き起こす——これが、歯周病と心臓病をつなぐメカニズムだ。

東京科学大学の研究では、歯周病の代表的な原因菌であるP.g.菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス)が心筋梗塞後の心臓組織の回復を妨げるしくみも解明されている。歯周病は「発症リスクを高める」だけでなく、発症後の回復にまで悪影響を及ぼすのだ。歯周病菌が心筋梗塞後の回復を妨げるメカニズムを解明 | Science Tokyo – 東京科学大学

重度の歯周病を患っている人は、そうでない人と比べて脳卒中・心筋梗塞・狭心症など脳や心臓の疾患の発生率が1.5倍〜2.8倍高くなるという報告もある。

アルツハイマーとの関連も指摘されている歯周病

さらに、九州大学や国立長寿医療研究センターなどの研究では、アルツハイマー病との関連も明らかになってきている。アルツハイマー病で亡くなった患者の脳組織からP.g.菌の毒素が高い頻度で検出された。いっぽう、正常な人の脳組織からはほとんど検出されなかったという。

国立長寿医療研究センター「歯周病と認知症の関連について(後編)歯周病と歯周病菌は認知症を悪化する?」

九州大学の動物実験でも、P.g.菌を投与したマウスの脳内でアルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβの蓄積量が増加し、記憶障害が誘発されたと報告されている。

九州大学「歯周病菌感染は全身の脳老人斑成分を脳内輸入させる」

口の中の細菌が、脳のバリア機能(血液脳関門)すら突破して認知症の引き金になりうる——この事実は、歯周病を「たかが口の病気」と放置するリスクの大きさを物語っている。

15歳以上の2人に1人が歯周病?

しかも歯周病は、決して他人事ではない。かつては「歯槽膿漏」と呼ばれ、「老人がかかるもの」という印象が強かった。

しかし令和4年(2022年)の厚生労働省「歯科疾患実態調査」によれば、歯周ポケットが4mm以上(やや進行した歯周病)の人の割合は、15歳以上の全体で47.9%にのぼる。およそ2人に1人が歯周病という状況だ。

年齢が上がるにつれてその割合はさらに高まり、45歳以上では過半数を占める。

厚生労働省「歯周疾患の有病状況」

歯周病はドブやイオウの口臭がする

歯周病になると、独特の臭いが発生する。周囲の人間が先に気づくケースも少なくない。

歯周病菌の中でもとくに重症化の原因となる「P.g(ポルフィロモナス・ジンジバリス)菌」は、メチルメルカプタンや硫化水素といった揮発性硫黄化合物を産生する。これが、歯周病特有の強烈な口臭の正体だ。

こんな臭いが口からしたら要注意

  • イオウの温泉のようなニオイ
  • ドブ川のようなニオイ

歯周病以前に、これほどの臭いが自分の口から出ていたら生活に支障をきたすだろう。しかし厄介なのは、本人は自分の口臭に慣れてしまい気づきにくいという点だ。

もし家族や周囲に指摘された場合、あるいは自分で少しでも違和感があれば、まずは歯科医院を受診ししたほうがよい。口臭の原因が歯周病であれば、治療によって改善が期待できる。

歯周病はキスやスプーン・箸の共有でうつる

心筋梗塞のリスクを高め、認知症の原因にもなり、ドブのような臭いまで放つ歯周病。さらに厄介なのは、「歯周病菌は人から人へうつる」という事実だ。

歯周病がうつる行為には、次のようなものがある。

  • キス
  • 回し飲み・回し食い
  • スプーン・箸の使い回し
  • くしゃみなどによる唾液の飛散
  • 妊娠中の母子感染

「自分はまだまだ歯周病なんてかからない」と思っていても、意外に身近に感染ルートがあるので、驚いてしまう。

歯周病にならないために

喫煙をやめる

まず、歯周病を誘発し悪化させるものとして、「喫煙」がある。

たばこに含まれるニコチンや一酸化炭素は、歯茎の血行を悪化させ、口腔内の免疫力を大きく低下させる。喫煙者は非喫煙者に比べて歯周病にかかりやすく、治療をしても改善しにくいという研究結果もある。

たばこの害は数々あるが、ダイレクトに口内に煙りを吸い込むことを想像すれば、歯周病への影響も大きいのだろう。

回し飲み・回し食いをやめる

回し飲みや回し食い、箸やスプーンの使い回しは、その参加者の中に歯周病菌を持っている人がいた場合、それをもらってしまうことになる。

なので、潔癖症と思われようが、回し飲み・回し食いはしないようにしよう。

また、前述した「歯周病患者特有の口臭」を持っている人と話すときには、くしゃみなどの唾が自分にかからないように注意する

よくかんで食べる

唾液には殺菌作用があるので、唾液をしっかり出すと免疫力が高まる。

逆に、唾液が少なくなると、口内の自浄作用が働かなくなり、細菌が繁殖する原因になってしまう。日頃からよくかんで食べるように心掛けると、歯周病対策になる。

かむ動作は脳への血流を増やし、認知機能の維持にも寄与するとされている。歯周病予防と認知症予防、一石二鳥の習慣といえる。

歯垢・歯石がたまらないようにする

歯垢(プラーク)は食べかすではない。1mgあたり約10億個もの細菌が棲みついた「細菌の塊」だ。歯石は、その歯垢が唾液中のカルシウムなどと結合して硬く固まったもので、通常の歯みがきでは除去できない。当然、歯周病菌もその中に潜んでいる。

だから、歯垢・歯石がたまらないようにすることが大切。そのためには、

  • 毎日の丁寧な歯みがき
  • ・デンタルフロスや歯間ブラシによる歯間清掃
  • 定期的な歯科医院でのクリーニング

が効果的。

基本的なことだけれど、これをしっかり歯をケアすることが歯周病の予防につながる。心筋梗塞・脳梗塞・アルツハイマー型認知症——こうした命に関わる疾患から自分を守るためにも、毎日の口腔ケアは欠かせない。

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