オイル美容は、肌の酸化が怖い。実際、不用意にオイルを使うと、ほぼ100%、肌の調子が悪くなる。くすんだり、ニキビができたり、毛穴が広がったり……。
そのデメリットのメカニズムと、デメリットを避けてオイル美容に取り組むためにはどうすればよいのか、まとめてみた。
肌に塗るスキンケア用オイルは「酸化」が心配
スキンケア用オイルは、どれだけ肌を柔らかくしようが保湿力が高かろうが、「酸化」というリスクを常にはらんでいる。そしてこの酸化が引き金となって起きるのが、「油焼け」と「ニキビ」だ。オイル美容で肌の調子が悪くなる原因は、ほぼこの2つに集約される。
そもそも「酸化」って何?
酸化とは、物質が酸素と結びつく化学反応のこと。金属がさびたり、切ったリンゴが茶色く変色したりするのも酸化反応の一種。
肌の上でも同じ現象が起きる。皮脂や塗布したオイルに含まれる「不飽和脂肪酸」や「スクワレン」が、紫外線・空気中の酸素・熱にさらされると酸化し、「過酸化脂質」という有害な物質に変わる。この過酸化脂質こそが、くすみ・シミ・シワ・たるみなど、あらゆる肌老化を加速させる元凶だ。
酸化が引き起こす「油焼け」
油焼け(オイル焼け)とは、肌や髪のうえで油分が熱や紫外線により酸化し、色素沈着を引き起こす現象を指す。結果としてシミやくすみの原因になり、「気づいたら顔だけ黒っぽい」という状態を招く。
かつて精製技術が低かった時代、不純物の多い鉱物油が油焼けの原因としてたびたび問題になった。現代では精製技術が格段に向上しているため、きちんとした美容用オイルであれば油焼けの心配はほとんどない。ただし、食用オイルをスキンケアに流用するのは話が別である。食用は風味を活かすために不純物が残りやすく、肌に塗ると酸化リスクが跳ね上がる。
酸化が引き起こす「ニキビ」
オイルを塗るとニキビが増える。この悩みを抱える人は多いが、ニキビの発生は大きく2つの経路で起きる。
1つ目は、毛穴の詰まりと常在菌の増殖。 皮脂や塗布したオイル中のトリグリセリド(中性脂肪)は、肌の常在菌であるアクネ菌のリパーゼ(分解酵素)によってオレイン酸などの遊離脂肪酸に分解される。このオレイン酸が毛穴の出口の表皮細胞を刺激し、角化(硬化)を促進する。角化が進むと毛穴がふさがり、内部に皮脂がたまってコメド(ニキビの初期状態)が形成される。そしてアクネ菌がさらに増殖し、炎症を伴う赤ニキビへと悪化する。
オリーブオイルやツバキ油のようにオレイン酸を豊富に含むオイルは、とくにこのリスクが高い。皮膚科医のなかには、油分の多い化粧品がアクネ菌にとっての“エサ”となり、ニキビを確実に増やすと断言する専門家もいる。
2つ目は、酸化による炎症。 肌の上でオイルが酸化して過酸化脂質に変わると、それ自体が肌に炎症を起こす。炎症が起きればメラニン色素の生成が活性化され、シミやくすみにもつながる。
つまり、酸化しやすいオイルを肌に塗る行為は、「油焼けによる色素沈着」「ニキビの悪化」「免疫力の低下」という三重苦を自ら招く可能性があるのだ。
酸化を気にするならスクワランがおすすめ
ただ、オイルにはオイルのメリットがあることも事実。乾燥がひどい肌には、どんな高級クリームよりも、結局、オイルが一番いい(保湿という観点では)。それに、私は髪がかなり長いので、ヘアオイルは、欠かせない。
では、どのオイルを使えば良いの?
「オイルを使う」となったとき、重要なのは、「どのオイルを使うか」ということ。結論から書いてしまうと、最も酸化しにくいオイルは、「スクワランオイル」だ。
スクワランオイルは、オリーブオイル・椿油・馬油etc.に比較して、圧倒的に酸化しにくい。「ほぼ100%酸化しない」といってもよい。
スクワランとは?
深海ザメの肝油やオリーブなどに含まれる「スクワレン」に水素を添加して安定化させたオイルである。化学的にいえば、スクワレン(C30H50)は不飽和炭化水素(二重結合を多く持つ構造)のため非常に酸化しやすい。そこに水素を加えて飽和炭化水素(C30H62)に変換したのがスクワランだ。炭素と水素だけで構成される極めて安定した分子構造のため、酸素と結びつきにくく、ほとんど酸化しない。
スクワランオイルの選び方のコツ
スクワランオイルを選ぶときのコツは、「100%スクワランオイルしか配合されていない」ものを選ぶここと。スクワランは、純度が高いほど酸化しにくいからだ。
たとえば、オリーブオイルなどがベースになっていて、そこにスクワランオイルが添加されているようなものでは、意味がない(ほかのオイルの部分が酸化のリスクを持ち込んでしまうから)。
スクワランオイル100%の化粧品はいろいろある。たとえば、Amazonで購入できる商品は下記のとおり。
数百円のものから、1万円近いものまでいろいろあるので、自分に合いそうなものをチョイスすればOK。
スクワランオイルは動物由来がいい?植物由来がいい?
スクワランオイルは、もともとは深海ザメの肝油から精製されたオイルとして知られてきた。
近年では、オリーブやサトウキビから抽出した植物性スクワランも広く普及している。サトウキビ由来のスクワランは再生可能な資源であり、環境負荷が低い「次世代型スクワラン」としても注目されている。
動物由来と植物由来、どっちを選べばいいの?
という点が気になるところだが、動物由来でも植物由来でも、化学的な構造・機能に違いはない。どちらを選んでも、酸化しにくさや保湿力に差は生じない。
スクワランの使い心地はサラサラでベタ付かない
使い心地はオイルとは思えないほどサラッとしている。べたつかず軽い質感なので、オイル嫌いの人にも受け入れやすい。
私も、ベタベタするのが大嫌いなタイプだけれど、スクワランなら大丈夫。むしろ、「どこいった?」と思うくらい、肌の上からいなくなってしまう感じ。
というのは、スクワランはもともとヒトの皮脂中にも含まれている成分だから、肌なじみが抜群によいのだ。アレルギー反応も起こしにくい。
スクワランは25歳前後をピークに体内での生成量が減少していくため、外から補ってあげる価値は十分にある。
スクワラン以外の酸化しにくいオイル(酸化しにくさの序列順)
スクワラン以外に、スクワランほど酸化しない美容オイルはあるの?
という質問については、スクワランと同等レベルで酸化しにくいオイルは存在する。ただ、それぞれ性質が異なるので、以下で整理しておこう。
◆ 最上位:炭化水素系(ほぼ酸化しない)
- スクワラン:炭素と水素だけで構成された飽和炭化水素。二重結合を持たないため、酸素と結びつく余地がほとんどない。化学的に「極めて酸化安定性が高い」とされる。
- ミネラルオイル(鉱物油、ワセリン):石油を高精製した炭化水素。スクワランと同じく炭素と水素だけで構成されており、酸化安定性はスクワランと同等かそれ以上に高い。ベビーオイルの主成分として身近な存在だ。ワセリンもこの仲間に入る。
この2つは化学構造が根本的に「酸化しようがない」タイプなので、別格といえる。
◆ 次点:液体ロウ(ワックスエステル系)
- ホホバオイル:じつは厳密には「オイル(油脂)」ではなく「液体ロウ」に分類される。主成分のワックスエステルは、一般的な油脂(トリグリセリド)とは構造が異なり、脂肪酸の含有比率が低い。そのため酸化安定性は高い。スクワランほど圧倒的ではないが、植物オイルのなかでは群を抜いて酸化しにくいとされ、朝の使用も問題ないとされている。ただし、7℃以下で固まるという弱点がある。
◆ その下:不飽和脂肪酸を含む植物オイル(酸化リスクあり)
ここから先は、程度の差はあれ「酸化する」オイルになる。
- オリーブオイル(オレイン酸が主成分、二重結合1つ):比較的安定しているが、スクワランやホホバには及ばない
- アルガンオイル:ビタミンEの抗酸化力で自らの酸化を抑えているが、構造的には不飽和脂肪酸が多い
- 椿油:オレイン酸が約85%と高く、オリーブオイルに近い安定性
- 馬油・ローズヒップオイル:不飽和脂肪酸が多く、酸化しやすい部類
私はスクワランオイルが一番だと思う
スクワランとミネラルオイルは、どちらも酸化しにくいなら、ミネラルオイルでいい?
という疑問については、私はスクワランオイルが一番だと思う。
たしかにミネラルオイルやワセリンも酸化しないが、肌の表面に膜を張るだけで角質層には浸透しにくいから。肌をふっくら柔らかくするエモリエント効果(軟化作用)は、スクワランに劣る。また、ヒトの皮脂にも含まれるスクワランのほうが肌なじみの面で圧倒的に優れている。
ただ、このあたりは人それぞれの感じ方が違うし、私もケースバイケースでワセリンを使うことも全然ある。
とにかく、オイル美容は、オイルの種類を間違えると、肌の上で「さびた油」を広げているのと同じ。大前提として、酸化しないオイル(=スクワラン・ミネラルオイルか、ホホバオイル)を選ぶことがとっても大事。

