〈親に壊された心の治し方「育ちの傷」を癒やす方法がわかる本〉という本を読んだ。
著者自身が、私が今までに読んだ毒親本のなかで、もっとも過酷な生い立ちだったせいか、すんなりと本の内容が、心の中に入ってきた。
『親に壊された心の治し方「育ちの傷」を癒やす方法がわかる本』
下記記事で、「お母さん、私を自由にして!」という本を読んだことを書いた。
上記本を、Amazonで購入したために、最近、Amazonの「あなたにおすすめ」として、毒親系の本がよく表示されていた。
その中で、「あっ。これは読みたい」と目に付いたのが、下記の本。
レビューを見てみると、私が見た時点では7件しかないけれど、すべてが★5という高評価。
これは何か私にとって大事な本になる気がして、購入した。
結論からいえば、毒親育ちの人にとって、救いになる可能性が高い、非常に良い本だった。
著者自身の生い立ちが凄まじいから、認める気持ちになれる
本の中にも出てくるが、育ちの傷がある人は、同じ傷がある人に惹かれやすい。
どこか、「自分と同類しか信用しない」「傷ついている人しか認めない」という傾向があるのではないかと思う。
だから、せっかく素晴らしい内容が書かれている本であっても、その本を書いている著者が幸せな生い立ちだったり、逆に毒親の立場だったりすると、急に本自体を認められなくなったりする。
そんなことが、この本にはまったくない。著者自身の毒親育ちの生い立ちを読むと、変な話、
- 自分より上(上級者)
と、思えるのだ。
本の中から、生い立ちの部分を抜粋すると、下記の通り。
藤木美奈子の生育歴
<児童期>
出生
出生大阪市西成区のアパートの一室で出生。無学歴だったシングルマザーの母は当時10代で、その両親もすでに他界していたため、祖父母、実父の顔を知らずに育つ。0〜6歳
母は水商売で家計を支えていたため生活は不安定で、仕事を求めて全国を転々とする。弟が生まれたがしばらく親戚に預けられていた。7歳
義父の連れ子と弟を合わせた5人での同居が始まる。義父は働かず、借金をくり返す。お金がもとで夫婦の間に争いが絶えず、面前DVの日々。生計がひっ迫するにつれ住まいを転々とする。10歳〜
線路沿いの風呂のない二間のアパートで5人が暮らす。自身が小4の時、母が睡眠薬を一瓶飲み、ガス管をくわえて自殺をはかる。脳の後遺症により失語。義父からの性暴力を含む児童虐待が始まる。不眠がつづき、家出をくり返す。小学校の担任に打ち明けるがとりあってもらえず。13歳〜
家庭で自分の身を守る必要を感じ、空手教室に通い始める。そこでのちに夫となる先輩Tに出会う。<成人期>
18歳〜
地方公務員だったTと高校卒業後すぐに結婚。アルコール依存でもあったTから日常的にDVを受け、救急搬送と避難的入院を体験する。自身は当時国家公務員(刑務官)だったが、精神症状が出て職場・自宅を問わず摂食障害をくり返し、その後退職。26歳
ある日、突然失踪する。実家に身を寄せ、山で日雇いの伐採作業をして収入を得る。夫の追跡を逃れつつ、離婚届を役所へ出し、再度逃走して離婚成立。その後、就労するが長続きせず、職業訓練校へ入学。勉学と資格取得に励む日々。27歳
大阪市立大学(二部)に入学。仕事との両立ができず3ヶ月で中退。その後、職場での対人関係に悩み、「自己流性格改造トレーニング」を開始(後述)。その頃、2番目の夫Yと職場で出会う。29歳
Yと再婚(出産)、2児をもうける。会社設立、NPOを立ち上げ、社会活動に入る(その後NPO法人、のち一般社団法人となり2015年で20年経過)。44歳
大学を卒業していなかったため、受験資格を得て、大阪市立大学大学院に合格。入学の後、心理学領域の論文で博士号を取得。52歲
京都の龍谷大学にて准教授として勤務するかたわら、障害者の就労支援の現場で心理臨床に携わる。55歳
一般社団法人代表理事として、障害福祉サービス(自立訓練・生活訓練)を立ち上げ、困難をかかえる人々にSEP(自尊感情回復プログラム)を提供する。兼任講師として、関西大学臨床心理専門職大学院で指導、大阪市こども相談センターで心理カウンセラー(外部)を務める。
親に壊された心の治し方 「育ちの傷」を癒やす方法がわかる本
まとめてみると、なんと、著者は下記のことをすべて経験している。
- 片親育ち(シングルマザー)
- 義父によるDV
- 母親の自殺未遂(後遺症あり)
- 義父による性暴力
- アルコール依存症患者との結婚・離婚
- 夫によるDV
- 摂食障害
- 失業
- 失踪
こんな著者は、私が今までに読んだ本の中では、いなかった。
つらい生い立ちに触れていることはあっても、「甘い」と感じてしまう。
逆に毒親経験者ぶらない、単なる心理学の権威の方が、信頼できると感じていたくらいだ。
どんなに最悪な環境にいても、傷は癒すことができるのだと教えてくれる
〈親に壊された心の治し方「育ちの傷」を癒やす方法がわかる本〉を読むと、
- 「こんなに最悪と思える環境にいても、傷は癒すことができるのか」
と、心底びっくりする。
毒親育ちの人は、その傷を癒そうと向き合いながらも、なかなか、なかなか、うまくいかない。
救いを求めて、いろいろな本を読むと、その度に、
- 自分の人生がうまくいかない原因は、育った家庭環境にある
ということを深く理解し、強く実感する。
どんな本でも、そのことの証明に、多くのページ数が割かれているからだ。
ただ、それがわかったところで、「心の傷の癒し」は簡単には起こらない。
自分の人生でいま具体的に困っていること(例:DVの被害者/加害者である、緊張しすぎる、人の目が気になる、異常な心配性、摂食障害、etc.)が解決するわけでもない。
それどころか、
- 「私がうまくいかないのは、育った家庭環境のせいだ!」
- 「その傷を癒さなければ、何も解決しない!」
という確信をどんどん強めてしまい、傷を癒したい・癒せない、と繰り返すうちに、だんだん、
- 「こういう育ち方をしたら、もう治すことはできないんじゃないか」
という不安と絶望が、押し寄せたりもする。
そんなとき、〈親に壊された心の治し方 「育ちの傷」を癒やす方法がわかる本 〉の著者の、
- こんなにひどい育ち方をしたけれど、こんなに傷が癒えた
という実例は、勇気になる。
同時に、この本の中で紹介されている癒しのプロセス(「自己流性格改造トレーニング」、のちのSEP(自尊感情回復プログラム))は、著者自身が実践した、また実際にカウンセラーとして多くの人を癒してきた方法だから、実際に効果も高い。
中途半端にここで紹介して害になるのはいやなので、気になる方は、直接、本の中で確認して欲しい。
また、本書がとても良かったので、対面カウンセリングなど受ける機会はないか調べたところ、著者の藤木美奈子氏は、大阪で「一般社団法人WANA関西」を主宰しており、そこでは、本の中で紹介されている回復プログラムを受けることもできる様子。
関西地方の人なら、直接訪ねてみるのも、よいかも知れない。