今月の質問回答その4。
ホルモンバランスを整えるため、少し体重と体脂肪を増やしたいと思っています。
全体的にバランスよく脂肪(と筋肉)を付けるうえで、気を付けるべきこと(食事、生活スタイル、運動など)はどんなことがありますか?
痩せすぎていると良いことばかりではない
私は過去に、病的な低体重を経験しており、そこから体重を増やしてきたことがある。
摂食障害(拒食症)で低体重になっている場合、“ある程度”まで体重を増やすことは、重要な課題だ。
ただ、その“ある程度”が、難しい。一気に過食に走って、何十キロも増えてしまったり、逆に怖くてまったく増やすことができなかったり。
そんな苦労を思い出しつつ、私が気を付けていたことを書いてみたいと思う。
とにかくタンパク質中心の食生活にすることで食欲から解放された
まず、第一に重要だったと挙げたいのが、
- タンパク質中心の食生活
だ。
体が異常な低体重に陥っているとき、猛烈な食欲を経験することがある。体は生命の危機を感じている。そこから逃れようとする本能的な食欲は、すさまじい。
体の反応だから、精神力で抑制できる類いのものではない。この食欲と戦うのは、本当につらいし、難しい。
本能的な食欲の暴発を、最小限に抑える鍵が、「タンパク質」だと思う。
逆に、「糖質」は鬼門だった。血糖値の乱高下が起き、食欲に振り回されやすかった(私の場合)。
- 「お米を食べなさい」
と指導される場合もあるかもしれない(私も言われたことがある)。
が、上手に回復できた時期の私は、お米を一切断っていた(パンやうどんなど、お米以外の主食も含めて)。
現在は、「糖質制限」という食事法がメジャーになった。糖質を取らない食生活の情報があふれているから、取り組みやすいと思う。
たくさん食べられないのなら貴重な食欲をタンパク質に使う
一方、食欲が全然ないというケースもある。
炭水化物(糖質)・脂質・タンパク質の中で、体を作るために一番重要なのはタンパク質だ。
たくさん食べられないのなら、その少し食べられる食欲を、タンパク質に使う。
質問文にあった「ホルモンバランスを整える」という目的のためには、脂質も必要ではある(ホルモンの原料が脂質だから)。
ただ、タンパク質(肉・魚・卵・大豆)を取っていると、おのずと脂質も取ることになる。食事から脂質を含むタンパク質が取れていれば、別途がんばって取らなくてもOK。
積極的に取るなら、やはりオメガ3系のオイルが調子良かった。アマニオイル・エゴマオイルなど。私は加熱OKのインカインチオイルを愛用している。
食べたくないなら食べたいものを食べる
タンパク質中心が良いとはいえ、どうしてもタンパク質を取る気になれないのなら、無理せずに食べたいものを大事に食べる、でOK。
ただ、菓子パン・スナック菓子・スイーツ・ジャンクフードの類いは避けておいた方が、体が楽。
私自身は、タンパク質中心の食生活になる前段階の時期で、よくフルーツとナッツを食べていた。有機栽培りんごやドライフルーツ(いちじく・デーツ)。オーガニックのミックスナッツなどを選んでいた。
手間暇かけて大事に育てられたものを、大事に食べると、心が落ち着いた。そのうち、タンパク質も食べられるようになった。
体重計には乗らない
あくまでも私の体験談になるが、体重を増やそうと決めた時点で、体重計は捨てた。
体重計の数字に左右される心を変えることはできなかったので、物理的に体重計の数字を知ることのできない環境を作った。
一年に一度の健康診断のときにやむなく量るだけ。それ以外は、体重の数字は一切、無視して過ごした。
一番 痩せていたときに着ていた服を手放す
もうひとつ、体重計と同じ趣旨で、最も痩せていたときに着ていた服は手放した。
これには、結構、時間がかかった。
- 「一度太っても、またいつかあの頃みたいに痩せたい」
と、心のどこかで思っている証拠だった。
ただ、もう着られない服(異常に細い服)を見る度に気が滅入った。時々、我慢できずに着てみて、あの頃との違いを見せつけられて愕然としたりした(すごく心の毒だった)。
そんな自分が嫌で、あるとき、サイズの小さな服はすべて手放した。その行動と同時に、
- 「私はもう、あの頃には戻らない」
という決意が、自分の中にしっかり植え付けられたように思う。心がブレなくなった。
低体重から復活する時期には運動はしていなかった
現在の私は、ランニングやホットヨガなどの運動をしている。でも、低体重から復活する時期には、運動はしていなかった。
筋肉は、いつでも付けることができる。体重を増やさなければ危ない状況であれば、筋肉のことはいったん忘れて、「しっかり食べる」ことに集中するのが良い。
このブログには、摂食障害の方からのアクセスもあるのでこの場を借りて伝えたいのは、
- 摂食障害で低体重の状態で運動することには、命が危ないほどのリスクがある
ということ。
私自身、昔、利尿剤を久々に飲んでいる状態で運動したら、目の前が真っ暗になって倒れたことがある。
ほんの軽い運動で、いつもだったらまったく問題がない強度だったにもかかわらず。
それで後から調べたら、利尿剤を飲んでいると熱中症のリスクが高くなるそうだ。
(前略)利尿剤を服用している人は、利尿剤の水分・塩分排泄作用により脱水症状を起こしやすく熱中症を起こしやすい状態になっています。
大洋製薬株式会社 基礎疾患を持つ人の熱中症予防対策
このような背景から、低体重の問題を抱える人が体重を増やすとき、筋肉を付けようとがんばって運動するのは、おすすめできない。特に猛暑の間は、絶対に無理は良くない。
繰り返しになるが、筋肉を付けるのは、いつでもできる。私も、体重を増やした後で、問題なく体を作り直すことができた。
筋肉のことを考えるのは、低体重を抜け出して、体の調子が整ってからで十分。
サプリメントやプロテインは上手に使うと◎
ホルモンバランスを整えるためには、さまざまな栄養素が絡んでくる。
それをすべて食生活で補うのは大変なので、サプリメントを取り入れるのが楽だ。
一通りの栄養素が入ったマルチビタミンミネラルのサプリを飲んでおくと、体のバランスが整いやすい。
タンパク質量の確保という意味では、プロテインの手を借りるのも◎。
あとは、ホルモンバランスという意味では、生理が来ない状況に陥っているのなら、婦人科で相談し、ホルモン治療を開始するのが有効。
私自身は、ホルモン治療は行っていなかったがピルを飲んでいたため、強制的にホルモンバランスは整えられていた。自前のホルモンが減っても人工的に補給できている安心感はあった。
ただ、人によって合う・合わないが激しい類いの話なので、専門医に相談するのが賢明。