ライン使いしないスキンケア。1つのアイテムを「化粧水の分。乳液の分。美容液の分…」と言いながら何度も塗る

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化粧水、乳液、美容液、クリーム。スキンケアの「正解」としてくり返し語られてきたこの順番。

私はある日、化粧水1本を3回に分けて塗るという方法を試してみた。アイテムをたくさん使うことより、少し時間を空けながら分けて塗ることが重要なのでは?という思いつきで。結論からいうと、まるで高級化粧品をライン使いしたみたいに、肌がふっくらツヤツヤになった。

この記事では、なぜ分け塗りで肌の調子が変わるのか、ライン使いの本当の意味は何なのか、皮膚科学の知見も交えながら掘り下げてみたい。

目次

スキンケアのライン使いとは何か

まず、そもそも「ライン使い」とは何なのかを整理しておく。

「化粧水→乳液→クリーム」はアジア特有の文化

スキンケアの「ライン使い」とは、同じブランドの同一シリーズで基礎化粧品を揃えて使う方法だ。化粧水→乳液→美容液→クリーム…と、ステップごとにアイテムを重ねていく。

じつは、この複数のステップでのスキンケアはアジア特有のもの。欧米では洗顔後にクリームを1つ塗って終わりという女性も珍しくない。海外ブランドの多くは、もともと美容液やクリームの単品だけで展開しており、化粧水や洗顔料は日本市場に向けて特別に開発されたケースも多い。

「化粧水で水分を与え、乳液の油分でふたをする」というおなじみのロジックは、世界共通ルールではなく、日本の美容文化が育てた習慣。

ライン使いの意外な落とし穴

化粧品開発者の咲丘恵美氏は、ライン使いに対して面白い指摘をしていた。多くのブランドはメイン成分をライン全体で共通化する傾向があるため、ライン使いでは単一の成分効果にとどまり、対応できる肌悩みの幅が狭くなるケースがあるという。OTONA SALONE

むしろ化粧水でビタミンC、美容液でレチノール、乳液でセラミドのように、異なる成分を自分で組み合わせたほうが幅広い肌悩みに対応できるのだ。

では、ライン使いにメリットがまったくないのか?といえば、そうとも言い切れない。ライン使いで肌の調子が良くなる人がいるのは事実だから。

問題は、その効果が「成分」に由来するのか、それとも別の要因なのかという点にある。

基礎化粧品の「浸透」について知っておくべき前提

ライン使いの是非を考えるうえで、基礎化粧品が肌にどこまで届くのかという前提知識は欠かせないのでここで補足解説。

届くのは角質層(0.02mm)まで

化粧品の成分が届くのは、表皮の最も外側にある角質層(わずか0.02mm程度)まで。角質層とは、すでに活動を止めた角質細胞が10〜20層ほど重なった薄い膜。やがて垢として自然に剥がれ落ちる運命にある。

角質層の奥にある「真皮」にまで化粧品成分を到達させる手段は、通常のスキンケアには存在しない

薬機法(旧薬事法)でも、化粧品が角質層より奥まで浸透するかのような広告表現は禁じられている(よく広告で『※角質層まで』といった注釈を見かけるはず)。

形成外科医の落合博子氏は著書のなかで、化粧水がケアしているのは0.02mmの死んだ細胞の表面にすぎない、と指摘している。化粧品は「角質層まで」であり、肌の「奥深く」に届いているわけではないという点は、押さえておくべき大前提。

シーボンビューティージャーナル「化粧水が浸透しなくて困る!原因や浸透させるポイントを解説」ネットショップ担当者フォーラム「化粧水などで使う『浸透』という広告表現。どこまでなら大丈夫なの?」落合博子『美容常識の9割はウソ』(PHP研究所、2019年)

それでも基礎化粧品に意味はあるのか

ここで「角質層までしか届かないなら無意味では?」と考えるのは早計。角質層は肌のいちばん外側にあり、見た目の質感を大きく左右するから。正常な角質層は15〜20%の水分を含んでおり、この水分量が保たれていれば、肌はしっとりすべらかに見える。

ただ、基礎化粧品のなかで化粧水の成分の大半は水分であるため、塗っただけでは蒸発する。蒸発する際に肌の水分まで奪われるリスクもある。だから、化粧水の後に油分を含むアイテムで「ふた」をする工程が推奨されてきた。おなじみのライン使いのステップだ。

エステダム「その塗り方じゃ効果減?おすすめの保湿クリームの使い方」

ライン使いの「本当の効果」は工程にあるのでは?という仮説

ここからが記事の本題。

成分よりも「塗り方の丁寧さ」がカギでは?

ライン使いで肌の調子が上がる人は多い。それは事実だろう。しかし、その効果は「3〜4種類のアイテムの成分の相乗効果」よりも、「何度にも分けて丁寧に塗る工程そのもの」に負うところが大きいのではないか?と思った。

化粧水だけを使うなら、パパッと塗って終わる。30秒もかからない。

しかし、化粧水・乳液・美容液を使う場合、化粧水を塗ったらフタを閉め、乳液の容器を手に取り、フタをあけ、手のひらに出し、顔になじませ……という具合に、ワンテンポずつ間を置きながら、少なくとも3回は肌に触れる。この一連の工程には3〜5分ほどの時間がかかる。

さらに「ハンドプレス」もきちんとやれば、スキンケア効果は高まるばかり。

ハンドプレス」とは、手のひらの体温と圧で化粧品を角質層になじませる手法。1回塗ったあとに少し間を置き、なじんでからもう1回重ねると、角質層全体にムラなく水分や成分がいきわたる。手のひらの体温と圧には、血液循環を良くする効果もある。

つまり、

  • ライン使いによるスキンケア効果の正体は、複数アイテムの相乗ではなく、「時間をかけて何度も重ねる行為そのもの」にある

のではないか?これが私の仮説だった。

美的.com「化粧水の正しい付け方は?肌悩み別の効果的な使い方・順番・選び方」

1つのアイテムを「化粧水の分。乳液の分。美容液の分…」と言いながら何度も塗る

そこで実験してみた。使うアイテムは化粧水1本。それを3回に分けて塗る。同じアイテムなんだけれども、「化粧水の分。乳液の分。美容液の分…」といいながら塗る(「これはクリリンの分」みたいな感じで)。

手順

1回目(化粧水の分): 500円玉大の化粧水を手のひらに取り、体温で少し温めてから、顔全体にやさしくハンドプレス。内側から外側、下から上へなじませる。1分ほど待つ。化粧水が肌になじむ時間を取る。

2回目(乳液の分): 100円玉大の量を手に取り、とくに頬や目尻など乾燥しやすい部位を中心にもう1度なじませる。また1分ほど待つ。

3回目(美容液の分): 1円玉大の量を手に取り、目元・口元など細かい部位に丁寧に重ねる。最後に顔全体をやさしくハンドプレスして仕上げる。

使っているアイテムは1種類。だが、まるでライン使いしているかのように、3種類分のつもりで塗る。1回ごとにちょっと間を置く。まるで違うアイテムを塗り分けているようなつもりで。

やりすぎは逆効果になることも

注意点としては、角質層が保持できる水分量には上限がある。いくら塗っても0.02mmの膜が吸収する量は限られるため、5回も6回も重ねる必要はない。吸収しきれなかった水分が蒸発するとき、肌自体の水分まで奪われてしまう可能性があるので、この点は注意。

パナソニックと美容皮膚科医の貴子氏による共同調査では、化粧水をたっぷりバシャバシャ使ったり過度に重ね付けしたりする行為を「勘違いスキンケア」として紹介しており、重ねすぎはかえって乾燥のリスクを高めると警告している。パナソニック(プレスリリース)

肌が敏感なとき・炎症があるとき・赤みやかゆみがあるときは、無理に重ね塗りをしないほうが安全。

同じ化粧水を3回塗っただけなのに、ひたひたすばらしい肌感に

3回を上限の目安にして、肌がひんやりして手のひらに吸いつくような感触になったら、「十分うるおった」のサイン。

私はこうして仕上げた肌の感触、かなり好き。まるで高級化粧品をライン使いしたあとみたいな、ヒタヒタうるおい感のある肌になる。

チャレンジとして、化粧水を変えて化粧水A→化粧水B→化粧水Cでもいいし、美容液→美容液→美容液でもいいし、もちろん化粧水→美容液→乳液でもいいだろうし、「3回塗る」パターンで無限にスキンケアパターンを生み出せる。

スキンケアは自分が思うように自由にやっていい

最後に結論めいたことをいうなら、スキンケアは自分が思うように自由にやっていいと思う。何も決まり事はないし、メーカーや美容家が提唱する手法が、自分の肌に合う保証もない。

「○○しちゃいけない」とか「△△しないといけない」とか、「そのままでは将来後悔することになる」とか、いろいろな主張があるけれど、それも本当に人ぞれぞれ。

私は今までどおり、気が向くままに、何もスキンケアしない時期、化粧水を塗ってみる時期、オイルだけ塗ってみる時期など、そのときどきで良さそうなことを自由にやっていくと思う。

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