「今日こそ早く寝よう」と決意したのに、なぜか夜更かししてしまう。
「夜10時までに寝る」という自分ルールを作り、守れている間は快調だったのに、一度崩れると歯止めが利かなくなる。
しかし、ルールのたった一語を書き換えただけで、この悪循環から抜け出せた。
それは、「〜までに寝なければ」を「〜からは寝ていい」に変えただけ。
「夜10時までに寝る」ルールが崩壊するまでの話
「夜10時までに寝る」のルールは、守れているうちは快適だった。
より正確にいうと、22:59までにベッドに入っていればクリア、というルール。毎日守れていると、「自分はきちんと生活を管理できている」という自己効力感が得られる。
問題は、守れなくなったとき。
時計が23:00を過ぎると、
「あ〜!11時過ぎちゃった!早く寝なくちゃ、早く早く」
…と、焦燥感が一気に押し寄せてくる。
やがて22:00が近づくだけで心がざわつくようになった。
「もう10時だ、早く寝なくちゃ」
と、就寝が“締め切り”のように感じられるのだ。
この焦りが交感神経を刺激して覚醒を高め、余計に寝つけなくなるという皮肉。そして時間どおりに寝られない日が2〜3日つづくと、ルールはなし崩し的に崩壊していった。
「就寝の先延ばし」にハマっていた
あとから知ったのだけれど、私の現象は、心理学では「就寝の先延ばし(ベッドタイム・プロクラスティネーション)」と呼ばれるものだった。特別な用事がないにもかかわらず、意図した時刻よりも就寝を遅らせてしまう行動パターンを指す。
「なるほど!」と思ったのは、この行動が“自己制御の失敗”と深く結びついていること。
日中にストレスや疲労で自己制御のリソースを使い果たすと、夜の「寝るべき」という判断に回す余力が残っていない。つまり、意志の問題ではなく、意志力の枯渇の問題だという。
国立精神・神経医療研究センター「睡眠を妨げる習慣を定量化する鍵に〜就寝を先延ばしする傾向を測定する日本語版尺度を開発〜」
過食再発と気象病が重なった先月
ルールが守れなくなったのには、直接的なきっかけもあった。以下で書いたとおり、先月(6月)はさまざまな不調が重なった時期だった。


心身が不調のときは、自己制御のリソースがさらに枯渇する。「早く寝なければ」と思っても、もううまくいかないのだ。
10時ルールなんてどこへやら…。はちゃめちゃな就寝時間が続いていた。
「8時すぎたら寝てOK」許可型ルールに変えてみた
とはいえ、早く寝て早く起きたほうが体調が良いことは、重々承知。就寝時間をまた早めたいと思い、なんとなく始めたのが、「8時すぎたら寝てOK」というルールだった。
一見すると、10時から8時に2時間、前倒したように見える。でもポイントはそこではなくて、ルールの構造のほう。
回避型から接近型へ
心理学に「接近動機づけ」と「回避動機づけ」という概念がある。
接近動機づけ(アプローチ・モチベーション)とは、望ましい結果に向かって行動するエネルギーのこと。回避動機づけ(アボイダンス・モチベーション)とは、望ましくない結果から逃げるためのエネルギーを指す。
「10時までに寝なければならない」は、典型的な回避型の目標設定だ。 「守れなかったら嫌な気持ちになる」「夜更かしを避けたい」——行動の動力源がネガティブな感情になっている。
「8時すぎたら寝ていい」は、接近型の目標設定に近い。 「もう寝られる!うれしい」「自分にごほうびをあげる感覚」——行動の動力源がポジティブな感情に替わる。
「〜までに寝なければ」は締め切り、「〜からは寝ていい」は許可。脳が受け取るメッセージはまるで別物。
結果の行動は同じでも気分がまったく違う
このルールを始めてからの就寝パターンは、結果として21:00頃にベッドに入る日が多くなった。遅くても22:00過ぎ頃にはベッドにいる。
行動の実態としては「10時までに寝るルール」を守っているときと、さほど変わらない。変わるのは、気分だ。
時間が近づいても「寝なくちゃ」という焦燥感に襲われないし、時間が過ぎても「ルールを破ってしまった」という罪悪感は生まれない。
むしろ、時計を見て「あっ、8時過ぎた!もう寝ていいんだ!」とうれしくなるくらい。就寝が“罰ゲーム”から“ごほうび”に変わった感じ。
許可型に変えて良かった意外なこと
許可型に変えて、夜更かしの癖から抜けたのはもちろん良かったことだけれど、ほかにも意外な良いことがあった。
❶ うたた寝しなくなる
まず、うたた寝が減ったこと。「8時すぎたら寝てOK=それまでは寝ない」ので、うっかりソファで寝落ち…というのはしないようになった。
「8時までがまん! 8時になったらベッドで寝る!」と、8時を楽しみに待つ感じで。
うたた寝で浅い睡眠しか取れないのに、寝つけなくなり夜更かしして、結局朝になる…、というのはすごくムダだと思っていたので、これがなくなったのはとてもよかった。
❷ 超朝活モードになるときがある
8時までに寝てOKとはいえ、実際には21時〜22時頃に寝ることがほとんどだけれど、ときには20時からぐっすり寝るときもある。
すると、深夜の2時頃にバチッ!とスイッチが入ったように目覚めて、そこから朝活モードに入るときがある(私は短眠型なので、3〜4時間睡眠でも問題ない。だから20時−2時の6時間睡眠なら睡眠時間としては十分)。
深夜2時の静寂のなかで、集中した作業や読書に没頭する時間はけっこう好き。

