前回の記事で、過去に私が下剤&利尿剤を乱用していたと書いた。
この記事では、下剤乱用に至った経緯・下剤依存による副作用、そして、私が下剤依存症を克服した方法を、詳しく書いてみる。
同じような境遇にいる人には、参考になるかもしれない。
この記事の目次
初めて下剤乱用に手を染めたのは高校生のとき
私が、ダイエットを初めてしたのは、高校一年生のときだ。
もともと痩せ型として生きてきて、特にダイエットが必要な体型だったわけではない。
でも、私は高校デビューしたかった。
残酷な「ミニスカート」
現在30代の私が高校生だった頃は、制服をうんとミニにして、ルーズソックスを履くのが流行っていた。
ミニスカートは、残酷なほど、脚の良し悪しの差を露わにする。脚の形、長さ、そして細さ。
全身が映るガラスの前を通る度に、気付かれないように、自分と友だちの脚をチェックしていた。
—— 負けてる。勝ってる。
そして、
- 脚が細くないとイケてない
- 認められるためには細い脚が必要
という価値観にとらわれた私は、脚を細くするために、過酷なダイエットに取り組む。
最初はまじめに運動+食事制限でダイエット
最初はまじめに運動+食事制限でダイエットをしていた。
人生で初めてのダイエットだから、ダイエット慣れしていない体は、おもしろいように痩せていった。
ただ、段々と、食べ物を食べるのが怖くなっていった。
その頃は実家暮らしで、食べ物のコントロールを自分でできない。
夕飯のメニューが高カロリーだと、反抗期も相まって、すごくイライラしたり。
今でも覚えているのは、友だちが教室で配った1本のポッキーが食べられなくて、それを「ありがとう」と受け取ったままトイレへ行き、トイレへ流したこと。
あの頃から、何かがゆがみ始めていたように思う。
「痩せてかわいくなったね」の称賛の声
1ヶ月ほどで美容体重からモデル体重への減量に成功した私は、周囲に、
- 「痩せてかわいくなった」
とよく褒められた。
その「承認」がやけにうれしくて、どんどん、ドツボにハマっていく。
逆行するようにダイエットはうまくいかなくなっていく
しかし、ダイエットは、やればやるほど、今度は体が慣れてしまい、思うような結果が出なくなっていく。
栄養不足が続いた体が、今度は反撃しだした。
食欲が暴れ出して、「もっと食べろ」「栄養クレクレ」という。
ポッキー1本さえ自分に禁じていたのに、暴れる食欲に耐えきれず、夕食後にチョコレートのエンゼルパイを食べてしまう。
狂うほどの罪悪感に襲われた
エンゼルパイをむさぼるように食べた直後、狂うほどの罪悪感に襲われた。
ものすごくムシャクシャして、自分に腹が立って、膨らんだお腹をグーパンチで殴った。
そのとき、ひらめく。
- 「食べても出せばいいんじゃない」
急いで実家の薬箱をあさる。
「麻子仁丸」というラベルが貼ってある、小さい粒が大量に入った瓶を見つけた。それは、漢方系の便秘薬だった。
つかんで、適当な量を口に放り込んだ。
その日の夜中、脂汗とともに…
便意が来たのは、その日の夜中。
ものすごい激痛、血が薄くなって倒れそうな感じ、脂汗……
それとともに、ドバッと便が出た。
へこんだお腹をなでながら、心底安堵感に浸った。
このとき、その後長年に渡って私を苦しめる、
- 「お腹が膨らんでいると発狂しそうになる」
↓ ↓ ↓ - 「下剤を飲んでペタンコにして安心する」
という思考回路が形成されたのだろう。
センナをお茶代わりに飲むようになる
今思えば、なんて危険なことをしていたのだろう、と思うのだけれど、下剤で出すことに味を占めた私は、薬局で売っていたセンナ茶を買ってきて、お茶代わりに飲むようになった。
しかも、ドロドロになるまで煮出して、ものすごく苦いのを飲む。
常に、下痢していた。そして、ガリガリに痩せていた。
過食嘔吐ができなくてますます下剤依存に
その後、大学に入り実家を出て一人暮らしを始めた。
食生活、自由。ダイエット、し放題。
ダイエットに励んだり休んだり、体重の上下を繰り返しながら20代を過ごしていた。
そんなあるとき、激しくダイエットをしたい時期がやってきた。
ネットでほかの摂食障害患者の情報を入手
それまでと違っていたのは、「ネット環境が整っている」ということ。
2chの「不健康で過激なダイエット」「骸骨になるスレ」などの情報を見るようになった(今検索してみたらまだ続いているようだ)。
そこで、多くの人が「過食嘔吐」をしていることを知った。
「わかめを底にして」「パスタは鬼門」「バナナを食べるとマー」「カショオ」
そんな、あの世界に足を踏み入れていない人には、到底理解できない内容。
幸か不幸か、まったく吐けず
- 「私もみんなみたいに吐けるようになれば、痩せられるはず」
そう思った私は、過食嘔吐にチャレンジした。かなり情報をかき集めて、徹底的にやったと思う。
しかし、まったく吐けなかった。まったく。
下剤依存で生きていくことを決意
過食嘔吐をマスターできなかった私は、下剤に生きることを決意した。
私の長年の下剤依存症が始まっていた。
※ちなみにその後「チューブ吐き」という、非常に危険な吐き方にチャレンジし、あっけなく習得できてしまう。これはこれで卒業に時間がかかったので、また次回以降書く(→追記:こちらに書いた)。
あらゆる下剤を試した結果「ツウカイ」を愛用
徹底的に下剤を使おうと思っていたので、あらゆる下剤を試した。
覚えているだけでも、次の通り。
- コーラック
- コーラックハーブ
- ビューラック
- ツウカイ
- サトラックス
- スイマグ
- ミルマグ
- 武田漢方便秘薬
- 百草丸
- 百毒下し
- ウィズワン
- エバシェリーン
他にもまだあったと思うけれど、思い出せない。
この中で、相性が良く愛用していたのが「ツウカイ」という、富士薬局グループのドラッグストアでしか買えない下剤。
ピンクの小粒系なのだけれど、微妙な配合が自分に合っていたんだろう。
食前1時間前に飲むと、食後4時間後にほぼ固形のまま、食べたものが出てくる状態だった。
その頃、よく、
- 「下剤を飲んでも痩せる効果はない。
大腸を通るスピードを速めるだけで、小腸ですでにカロリー吸収されている」
という意見を見掛けた。
論理的にはその通りなのだと思うけれど、私の体だと、未消化の状態で出てくるので、明らかにカロリーカットになっていた。
食べたカロリーに対して、明らかに太らなかった。
異常食欲を止めたい一心で下剤卒業を決心
しかし当たり前のことなのだけれど、下剤なんて飲んでいて良いことがあるわけない。
「痩せた!」と喜んでも、何年もその状態を続けられるわけではない。
程なくして、下剤によって「食べているのに栄養不足」という状態に陥った私の体は、必死に、生きるための抵抗を始めた。
異常な、あり得ない過剰食欲が大暴れしだしたのだ。
思い出したくない地獄の日々
この頃のことは、今思い出しても恐ろしく、もう二度と戻りたくない、と思う。
一時的に、160cm弱の身長で、体重が30kg前半まで減ったことがあった。
ここまで行くと、もう体は必死。そこからの生きるためのエネルギーって、個人のエゴが抑制できるような尋常なものじゃない。
いつもいつも食べたくて、しかも、変なものをガツンガツン食べるようになった。
塩1袋、砂糖1袋、はちみつ1瓶……みたいな食べ方。明らかに、体に悪い。明らかに、誤作動を起こしている。
下剤の量が増えていく
誤作動を起こして大量摂取した食べ物に比例して、必要な下剤の量も増えていった。
規定量は2錠。
それに対して、最初は4錠で十分に効いていたのに、最後は一度に40錠もの下剤を飲んでいた。
当時通っていたクリニックの主治医が、「私はそういうのに慣れているから驚かないから言ってごらん」というので言ってみたら、驚いていた。
でも、ネットでは「コーラック100錠」なんて人もいて、40錠で抑えられているのはツウカイのおかげだと、当時は思っていた(十分、体に悪いのに)。
下剤を飲むと異常食欲が増すことに気付く
いくら下剤を飲んでいるとはいえ、異常な食欲っぷりに、排出が間に合わない。
今度は、「太る恐怖」が私を支配しだした。
異常食欲をなんとか抑えようと試行錯誤する中で、異常食欲の原因の一つが、「下剤」にあることに気付く。
下剤を飲んでいる限り、食欲は過剰になり続けるのだ。
下剤によって強制的にスッカラカンにされた胃腸は、猛烈な勢いで食を求める。
だから、この暴れ狂っているおかしな食欲を抑えるためには、まず下剤をやめる必要があった。
- 「絶対に太りたくない。このままだと、太ってしまう」
そう思った私は、下剤をやめることを決意した。
下剤を飲まないとまったく出ない地獄
ところが、下剤を飲まないとまったく出ない。
お腹が膨れていくのを耐えて耐えて、自分のみっともない姿に怒り狂いそうになりながらも抑えて、必死の思いで下剤をやめているのに、うんともすんともいわない。
そりゃ、そうだ。
私は10代の頃からの下剤乱用で、さんざん腸をいじめてきてしまったのだから。
恐らく、ネットで見掛けた写真のように、大腸メラノーシスで腸の中が真っ黒になっているだろう。
あらゆる方法を試した結果、辿り着いたのは、昭和レトロなある薬
下剤を飲んで異常食欲で太るのは嫌だが、腸に便が居座ってお腹が膨らむのも許せない私は、便秘解消のあらゆる方法を模索し始めた。
おそらく、ネットでヒットするようなことは全部やったと思う。
食べ物、飲み物、サプリメントなどの一般的な方法から、ソルトウォーターフラッシュ、コーヒーエネマ(腸内洗浄)などのマニアックな方法まで。
で、結論から書いてしまうのだけれど、私を救ってくれたのは、どこの薬局にも置いてある、昭和レトロな整腸剤だった。
この、「強力わかもと」という薬。ビール酵母・乳酸菌・消化酵素が入っていて、下剤ではなく「整腸剤」の類いの薬。
最初は、
- 「整腸剤なんかで私の下剤依存が治るわけなんて、ぜっっったいにない」
と思っていた。
それが、どういうきっかけでこれを飲んだのか忘れたけれど(恐らく便秘以外の目的だったと思う)、なんと飲み始めて3日目に、ものすごく大きな立派な固形の便が出たのだ。
これは、非常に感動した。
だって、ウン十年も、下剤のピーピー下痢便しかできなかったのに、いわゆる「いいうんち」が出てきたのだから。
- 「ああ、私の腸、まだ大丈夫なんだ。ごめんね、これからは大事にするから」
と思ったのを覚えている。
それからさらに信じられないことに、4日目、5日目、6日目——と連続して、自力で排便できた。
さくっと書いてしまったけれど、下剤卒業を決心してからここに辿り着くまで、長い期間を費やして、お金をかけてさまざまなことを試しては気落ちして……の繰り返しだった。
だからこそ、喜びもひとしおだったのだ。
大げさかもしれないけれど、奇跡かと思った。
失った普通を取り戻すことを諦めなくて良いと思う
私に合った方法が他の人にも合うかどうかは分からない。
ただ、こんなにも健康的で、何の害もない(むしろ体にすごくいい)方法で下剤依存を解消できたら最高だと思う。
もし、下剤をやめたいけれども、
- 「下剤やめたら、太る」
と、思い込んでいるとしたら。
私の体験を話せば、下剤やめて、強力わかもとの生活になったけれど、太らなかった。むしろ、少し痩せた。
しっかり排便して、普通の食欲で普通の女子と同じ量を食べる。
そんな、失った普通を取り戻すことを、諦めなくて良いと思う。
整腸剤を試す場合は14日以上継続を
もし強力わかもとなどの整腸剤を試すのであれば、最低14日間以上は継続しないと効果が出ないらしい。
私は最初の3日目でドンと出てラッキーだったのだけれど、腸内環境が変わるためには、最低14日以上かかるらしいのだ。
だから、14日間、下剤がまんして、強力わかもと(または自分の気に入った整腸剤)にチャレンジしてみて欲しいな、と思う。
最後に
私は、すでに摂食障害を卒業して、健康的な生活をしている。
今回の記事は、当時書いていたブログを、何年かぶりに読み返して、記憶を辿りながら書いた。
読み返しながら、苦しくて胸が痛くなった(つらかったな、と思って)。
摂食障害は、理解されにくい。けれど、ただのダイエットではなく、いろいろな要素が重なると深刻に発症する。一度、あの穴に落ちると、なかなか戻ってこられない。
でも、それでも戻ってきたいと、今もがいている人に、ふと自分の経験をシェアしたくなってこの記事を書いた。