高濃度ビタミンCとピルを一緒に飲むのは要注意?併用でエストロゲン作用が強くなる可能性を検証

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エスターC 」という、ビタミンC高配合のサプリを、愛用している。ただ、ビタミンCとピルは、一緒に飲んではいけないという説があることを、最近になって知った。

まったく知らなかったので、今まで5年以上毎日、ピルと一緒にエスターCを飲んでいた。

目次

あらためておさらい:ピルと一緒に飲んではいけない薬

最近、低用量ピルからミニピルへ切り替えを検討している。あらためてピルの情報を洗い直している。その過程で、「ピルとビタミンCサプリは一緒に取るべきではない」という説があることを知った。

ビタミンCの話に入る前に、まずピルとの併用で広く注意喚起されているものを整理しておく。

ピルと一緒に飲んではいけない薬・サプリ

◆セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)

肝臓の代謝酵素CYP3A4を誘導し、ピルのホルモン成分の分解を速めてしまう。その結果、血中のホルモン濃度が低下し、避妊効果が弱まるリスクがある。欧米では実際に、セントジョーンズワートの併用が避妊失敗の原因として報告されている。

◆抗HIV薬・抗結核薬・抗てんかん薬

これらの薬もCYP3A4を誘導する作用を持ち、ピルの効果を弱めるおそれがある。処方時に医師から注意されるケースが多い。

◆バストアップサプリ(プエラリア・ミリフィカ、ワイルドヤム、ボロンなど)

これは見落としがちだが、ピルユーザーにとって非常に重要なポイント。プエラリア・ミリフィカの主成分は植物性エストロゲンに類似しており、その活性力は大豆イソフラボンの約1000倍ともいわれる。ピルのエストロゲンと作用が重複し、ホルモンバランスを崩すおそれがあるため、併用は避けるべき。厚生労働省や国民生活センターも、プエラリア・ミリフィカを含む健康食品による嘔吐・月経障害などの健康被害について注意喚起を行っている。ワイルドヤムやボロンも女性ホルモンの分泌に関与するため、同様に注意が必要。

◆イソフラボン(サプリメントでの高濃度摂取)

イソフラボンは構造がエストロゲンに似ており、植物性エストロゲンとも呼ばれる。豆腐・納豆・豆乳など日常的な食品から摂る分には問題ない。ただし、サプリメントで高濃度に凝縮されたイソフラボンを継続的に摂取する場合、ピルとの作用が重複するリスクがある。美容目的でイソフラボンサプリやソイプロテインを飲んでいるなら、処方医に相談しておくのが安心。

◆チェストベリー(チェストツリー)

PMS(月経前症候群)対策サプリの定番として知られるハーブだが、女性ホルモンの分泌を促す作用があり、ピルの効果を減弱させるおそれがある。市販のPMS用サプリ「プレフェミン」にもこの成分が使われている。そもそもピル自体にPMS緩和の効果があるため、併用する必然性は低い。

◆グレープフルーツ(できれば避ける)

グレープフルーツは「絶対禁止」というわけではない。ただ、含まれるフラノクマリン類(薬物代謝酵素の阻害物質)がピルの分解を妨げ、血中濃度を上昇させる可能性がある。実際に、グレープフルーツジュースがエチニルエストラジオール(ピルのエストロゲン成分)の生物学的な利用率を約28〜37%高めたというデータも報告されている。

「グレープフルーツとピルの相性が悪い」というよりも、「グレープフルーツは薬全般の代謝に影響しやすい」と考えたほうが正確。とくに抗うつ剤や降圧薬の場合、医師から一緒に取らないよう指導されるケースも多い。

ビタミンCはエストロゲン作用を強めてしまうのでNGという説

ここから本題。この記事のテーマの「ビタミンC」について。あらためて、いくつかのクリニックのサイトや、通院しているクリニックでピルを処方されたときにもらった説明資料などを読み直してみた。

「ビタミンCと一緒にピルを飲まないでください」という指導が書かれているものは、見つからなかった。

All Aboutの記事で引用されていた1981年の論文

ただ、All Aboutの記事によれば、ビタミンCと低用量ピルとの同時摂取によって、ピルのエストロゲン作用が強化されたというデータがあるという。

以下引用。

1981年英国メディカルジャーナル  Briggs MH氏の論文にこんな報告があるのです。

『低用量ピル(トリキラー、トリファジル、ノルデット)の服用者12人が、500mgまたは1000mgのビタミンCサプリメントをピルと一緒に服用。その結果、ピルユーザーが大量のビタミンCを摂取すると、低エストロゲンピルでも高エストロゲンピルと同じだけの強い作用が見られるようになることがわかった。』
 All About

つまり、低用量ピルを摂っていても、高用量ピルと同じだけの作用が出てしまうのです。それはつまり、副作用も強く出てしまうということ。偏頭痛や吐き気など、ピルの副作用は人それぞれですが、副作用が気になっている方はビタミンCとの併用には注意しましょう。
 All About

もしこれが事実なら、副作用(偏頭痛・吐き気など)が強まるだけでなく、エストロゲン濃度の上昇による血栓症リスクの増大も懸念される。私自身もこの情報を読んだとき、率直にヒヤッとした。

ただしこの論文には重大な注意点がある

調べていくなかで、じつはこの1981年の報告には見過ごせない背景があった。

論文の著者Briggs MH氏は、のちにデータ捏造が発覚した研究者である。 Briggs氏はオーストラリアのディーキン大学で経口避妊薬の安全性に関する研究を行い、WHOのアドバイザーも務めていた人物。しかし1983年に研究不正の疑惑が持ち上がり、1985年に大学を辞職。1986年には英サンデー・タイムズ紙の取材に対し、研究データの捏造を自ら認めた。ディーキン大学の調査委員会も、Briggs氏の複数の論文にデータの捏造があったと結論づけている。

1981年のビタミンCに関する報告が捏造であったと断定されているわけではない。だが、著者の信頼性に根本的な問題があるうえ、被験者わずか12名という極めて小規模な報告であった点は押さえておくべきだろう。

さらに重要なのは、1993年にZamahらがより大規模な追試を行い、否定的な結果を報告している点。 37名の女性を対象とした研究で、1日1gのビタミンCをピルと同時に服用しても、エチニルエストラジオール(ピルのエストロゲン成分)の血中濃度は有意に変化しなかったと結論づけられた。論文の結語では、「ビタミンCは、エチニルエストラジオールの薬物動態に干渉する薬剤リストから除外すべき」と明確に述べられている。PMID: 8222665

1995年に発表された関連研究(Kuhnzら)でも、ビタミンCがレボノルゲストレル(ピルのプロゲスチン成分)の代謝や血中濃度に影響しなかったと報告されている。PMID: 7750288

つまり、「ビタミンCがピルのエストロゲン作用を増強する」という主張は、捏造の前歴がある研究者による小規模な1981年の報告に端を発しており、その後のより信頼性の高い研究では否定されている。

エスターCやリプライセルなど高濃度の海外製サプリは注意すべきか?

1981年の報告で用いられたのは500mgまたは1000mgのビタミンCだった。エスターCやリプライセルなどの海外製サプリは1カプセルあたり1000mg前後と高配合であり、メガビタミン療法(1日数千mgを摂取する方法)を実践している場合はなおさら気になるところだろう。

私自身も、1日1000〜3000mgのエスターCを低用量ピルと一緒に飲んでいた。

ただし、前述のとおり1993年の追試では1日1g(1000mg)のビタミンCで影響が認められなかった。現時点で、低用量ピルの添付文書にビタミンCとの併用禁止は記載されていない。オンラインピル処方サービスのスマルナでは、産婦人科専門医の監修のもと「一般的な用法・用量であれば併用しても問題ない」としている。スマルナ

とはいえ、一部のクリニック(三軒茶屋ウィメンズクリニックなど)では「1日1000mgを超えるとリスクが高まる」と注意喚起しているのも事実。医療者のあいだでも見解が統一されていない以上、心配であれば処方医に相談するのが確実だ。

エストロゲン(卵胞ホルモン)は血栓症リスクの原因となる

「低用量ピルの吐き気や頭痛などの副作用が強まる」というだけなら大きな問題がないように感じるが、私がヒヤッとしたのは、いつも血栓症に気を遣っていたからだ。

低用量ピルに含まれるエチニルエストラジオール(合成エストロゲン)は、肝臓で凝固因子の合成を促進し、血液を固まりやすくする作用がある。血栓症の発症率は、ピル非服用者で年間1万人あたり1〜5人に対し、服用者では3〜9人と報告されている。頻度自体は低いものの、いったん発症すれば片足の腫れやしびれ、激しい頭痛、最悪の場合は肺塞栓(はいそくせん)や脳卒中といった深刻な事態につながり得る。

仮にビタミンCがエストロゲン作用を強めるなら、血液の凝固傾向も高まる可能性がある。現時点の科学的エビデンスではその相互作用は否定されつつあるが、「念のため注意しておく」という姿勢は決して悪くないと思う。

とくに、ピルの服用開始から3か月以内は血栓症のリスクがもっとも高い時期とされる。喫煙・肥満・長時間の座位(デスクワークや長距離フライトなど)と組み合わさればリスクはさらに上がる。ビタミンCの影響の有無にかかわらず、水分をこまめに摂り、適度に体を動かすといった基本的な予防策は怠らないようにしたい。

ビタミンCとピルを併用しても避妊効果には問題ない

なお、「避妊効果」という点では、ピルをビタミンCと一緒に飲んでも、問題ない。

仮にビタミンCがエストロゲン作用を強める方向にはたらくとしても、それは避妊効果を「弱める」のではなく、むしろ「強める」方向への影響となる。

セントジョーンズワートのようにピルの血中濃度を下げてしまうケースとはメカニズムがまったく異なるため、避妊の信頼性を損なう心配はない。

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